思わず目を奪われる艶やかな色合い、華やかに彩られた立体的な表現、和洋問わず美的エッセンスを凝縮した独特な紋様… 龍村の美術織物は、一目見てその作品と分かる感性に満ち溢れている。
美術織物というジャンルを確立し、それを高め続けてきた龍村美術織物。常に世界に向けて発信し続けるその魅力について、龍村育代表取締役社長に話を伺った。
斬新かつ独創的な意匠
― 時を経ても色あせることのない龍村美術織物の意匠ですが、紋様はどのような過程を経て考案されるのでしょうか?
まずテーマを決め、スケッチをおこしたり、あらゆる分野からデザインソースを集めます。その中でデザイン・カラー・ストーリーが三位一体になり得ると思われるものを更にアレンジ、ブラッシュアップを繰り返し本デザインが出来上がります。
― 和洋問わず美的エッセンスが凝縮されている織物。洋式の生活スタイルでも取り入れやすい柄など意識されていますか?
デザインソースは今まで通り多岐に渡りますが、柄のサイズ、カラーなどは今現在にマッチしたものを意識しています。
― ここ数年内に発表された紋様で、特に斬新な柄や、お客様の反応が印象的だったものがあれば教えてください。
・「ふしぎな一夜」→弊社では初めてのハロウィン柄ですが、ハロウィンキャラクターを隠し絵風にレイアウトし、銀糸で煌めき感をプラスする事で楽しく上品な「オトナハロウィン」を演出し好評でした。
・「天翔聖空文」→こちらも弊社では初めてのクリスマス柄でした。北欧ノルディックパターンを日本の吉祥柄で再構成し、カラーは彩度高め、銀糸で雪の雰囲気を演出する洋風のカラーリングとしました。日欧の冬柄×吉祥柄が斬新だとご好評いただきました。
その他、復元柄を現代風にしたもの、猫柄や今年の干支柄「寅」などの動物柄もご好評をいただいており、シリーズ化、新しい柄の開発も進んでいます。
美術織物の新しい未来
― 創業当初とは比較にならない程、和装をする機会が減少したかと思いますが、変化をどのように感じられていますか?
業界としては隆盛期の二兆円産業が今や二千億円台となっており、今後も縮小していくと思われます。しかし残った本当の和装ファンの方々が今はネット環境を利用し、SNSなどでより密でディープな和装コミュニティを形成しておられるなど、逆に成熟度は飛躍的に増している気がします。ときどき私もお忍びで弊社SNSへのお問い合わせにお返事させて頂きますが、なかなか楽しいですよ。
― これからの新しい取り組みにも注目が集まる龍村美術織物。今後どんなメッセージを発信していきたいですか?
初代平藏が掲げた社是「最高之品質」(最高に上品で気品があり、最高に生活の質を満足させるものづくり)を胸に、それを実現すべく「和の躍動、和の開放」(蓄積した日本の織り技法を発展させ、世界に広める)の精神で弊社の美術織物を世界中に発信していきます。
美しく色あせることのない意匠は、創業当初からの揺るぎない精神によって受け継がれてきたのだ。内側から輝くその美的感性と、柔軟で広い視野によるこれからのさらなる進化に注目したい。